公立豊岡病院円形本館
SRC円形3階建て
昭和29年9月18日起工 昭和30年10月26日完成
設計 日建設計工務㈱ 施工 錢高組 工事費 一億3500万円
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文化に立ち遅れた但馬路に全国で初めての天井も建物も全て円形という鉄筋コンクリートという近代的病院が出現する。
建坪1150坪、高さ18.5m、直径44m。内部は中央の直径23mの大広間(吹き抜け)。天井は彩光(採光)も明るいドーム式。円い天井にはガラスの彩光感窓がちりばめられる。(昭和29年3月7日 神戸新聞より)
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当時としては極めてユニークな円形建築に対する世評は、「病院建築の異彩」「全国で初めての近代的病院」「最先端を行く」「厚生省をはじめ建築界からも注目の的」「造形美術の名にふさわしい」などと総じて好評だった。中略 外壁はほとんどガラス張りで天井はプリズム仕掛けで太陽光線を取り込み「クリスマス・ケーキにガラスをはめこんだような美しい」建物で1階ホールから天井までのドーム式のシステムは戦後の新時代医療のあり方を具現化するもののような印象を世間に与えた。円形外来診療棟は世界初。 (豊岡病院史より)
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私達が病院の設計を依頼される場合、建築主側に新奇なものを作りたいという気分がかなり強いことがある。それも時によっては良いかもしれないが、病院のように複雑な機能と真剣な社会性を切実に包含している建物では、まずその目的を満たすことが第一であって、これを犠牲にしてまで実現しなければならないほどの重要な目標は他には何もないはずである。中略
全ての建築を通して新しい着想,構造計画、それから生まれる斬新な形態といったものは、それが建築の要求する機能を満たしてこそ価値があるものであって、形は面白いが使って見ると使用に耐えないという建築物を作ることはむしろ社会的罪悪であるといえよう。そういうものは独善的な建築家の技術的アクロバットであり、造型の自己陶酔にすぎないという事を一般の人も建築家もよくよく銘記すべきである。後略 ((豊岡病院設計覚書より 山根正次郎先生(元日建設計会長) 昭和30年4月 記))
平面図(図面をクリックすると拡大されます)
立面図(図面をクリックすると拡大されます)
断面図(図面をクリックすると拡大されます)
外観
薄い玄関のキャノピー
写真だけを見るとまさにスケールのでかい海外のイメージです。
内部 吹き抜け
天井 扇形になっている 亀甲形の網入りガラス
扇形の階段室 1
階段見上げ
扇形の階段室 2
きれいなフォルムの半円形の階段
待合
会議室
建設当時の写真
竣工時の写真
同時期、円形建物は県下では神鋼病院の他、特に学校建築に受け入れられて今津中学校(西宮市)・温泉小学校(温泉町)・摩耶小学校分校(神戸市)などがあったらしいが現存するのは
温泉小学校(温泉町)や神戸市内に3校ほど円形校舎が残っていると聞く。一度円形建物ばかり調べても面白いかもしれない。
新しい病院は3月13日竣工式。現在の病院は4月末まで使われるらしい。その後の使用は未定。